『幸福三兄弟のおはなし』


 
 むかしむかし、幸福という村に、セロン、オキン、ドーミン、という名の三兄弟がいました。

長男のセロンは穏やかでいつもニコニコしていました。セロンが村のみんなの集まりにやってくると、彼の笑顔を見たみんながリラックスできて、ポジティブな気分で楽しくなりました。

二番目の兄のオキンは子どもや小さい動物が大好きな愛情深い性格で、優しい雰囲気を持っていました。オキンと一緒にいるといつも褒めてくれるし、包み込むような優しさで癒やしてくれるので、みんなの想いが豊かになりました。

末っ子のドーミンはとても活発で元気でした。ドーミンと一緒にいるとやる気が出てくるし、活動的な前向きな気分が起こりました。

しかし、村のみんながあまりにもこの幸福三兄弟に頼りすぎたので、いつのまにか三兄弟の取り合いが起こりました。
三兄弟は悪い集団に誘拐されてしまいました。
今までいつも一緒だった三兄弟は悪者にバラバラにされて、それぞれさらわれた先で働かされました。

すると、悪者達の心と体に変化が起こり始めました。

セロンをさらったアジトでは、セロンがいる周りでは眠気やだるさが増したり、考える力が減少したりしました。

オキンをさらったアジトでは、お互いが憎しみ合い、愛するもの以外は異物と判断し、それを蔑み排除しようとする感情が生まれやすくなりました。

ドーミンをさらったアジトでは、そこにいるとこだわりが強まり、ものの見方が一方向からしか見られなくなったり、依存症に陥りやすくなりました。

これは幸福三兄弟をバラバラにしたからに違いないとみんなは思いました。

まずは、セロンを解放しました。
セロンが戻ってきたおかげで、そこにいるみんなが爽やかな気分に戻ることができました。

次にオキンを解放しました。
オキンが戻ってきたおかげで、人と関わるととても良い関係が築けるようになり、幸せな気分になることができました。

最後にドーミンが解放されました。
ドーミンが戻ってきたおかげで、仲間と協力して新しいことにチャレンジしたり、人や村や、はたまたそこから飛び出して社会に貢献するために動き出すものまでが増えました。

もう誰も幸福三兄弟の取り合いなどはせず、自分だけでなく周りもどんどん幸せになっていくという良い循環が起こりだしました。

幸福三兄弟誘拐事件から村人が学んだことは、三兄弟が揃っているとバランス良く村の活動を正常に機能させることができるということ、そして長男、次男、三男という順番でした。

大切なのは、誰が長男で誰がその次に生まれてきたのか、最後は誰なのかを知り、みんながそれを意識して守ることでした。
そうすれば、一人一人が今どの段階にいて、今できることがどのくらいなのかが判断できるようになるので、それを教え合えば失敗することがなくなる。
例え失敗しても、みんなで考えて修正ができるようになるということを学びましたとさ。

        おしまい

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