インナーチャイルドの声を聴こう②
〈第1話〉
K子ちゃんに噛み付いた話。
私が3歳頃だった気がする……
私とK子ちゃんとあと友達2、3人いたような気がする。
なんでだろう?海でもプールでもないのにみんなで浮き輪で遊んでた。
K子ちゃんは、私の101匹わんちゃんが描かれた黄色い浮き輪を見て、
「変だ」と言った。
K子ちゃんは確か、ピンク色のキキララの浮き輪で、キラキラした可愛らしい感じだった。
他の子は、確かキティちゃんとか、可愛らしくてキラキラしたデザインだった気がする。ピンク色とかお花とかリボンとか、そういう世界。
「変だ」と言われて、私はカッとなって、K子ちゃんに噛み付いた。
そのことが両親の耳に入った。
父親からとても怒られた。
「どんなことがあっても自分から暴力をふるってはならない」と、その時ものすごく強く教え込まれた。
私は母とK子ちゃんの家に行って、母親と一緒にK子ちゃんのご両親に謝った。
「父と母は、私を恥じている。」
私は幼心にそう学んだのだと思う。
そんなことを、今思い出した。
今思えばK子ちゃんは、「(私の考える)女の子はこういう世界が好きなんだよ」ということを無意識に私に教えたかったのだろう。それが「変だ」という言葉と態度の表現になった。
私は、それを知らなかった自分を恥じるのではなく、知らなかった自分をごまかすためにK子ちゃんの態度に何か攻撃的な敵意があると決めつけてしまった。
恥をどう表現してよいのかその時の私はわからなかった。
私は本能的にK子ちゃんの言葉と態度を攻撃だと認識して、防衛のために噛み付いたのだ。
私は何を守りたかったのか。
幼い頃から、私が大切にしていたものは何だったのか。
その時の私は自分の守りたいものに気づいていなかった。
私はただ突き進む、本能の塊だった。
シンプルに生きるのみだった。
そこには、まだ上手く生きるとかいう目的はない。
敢えて言えば、生きることを形作るための形のない手段としての私の表現だった。
私がその時知ったのは、「知らない」ということだ。
そして、その「知らない」が、恥の感情と初めて繋がった瞬間だった。
「女の子はキラキラしたものが好きなんだよ」を知った。
「どんなことがあっても自分から暴力をふるってはならない」を知った。
そこには中性的なものを好んで選ぶ傾向があった私を認めてもらえずに、それをK子ちゃんにバカにされたようで悔しかった私がいた。
父親に怒られたときに、暴力はいけないと言いながら怒鳴られて悲しかった私がいた。
たぶん、私は良いも悪いも全てを丸まま受け入れてしまったがために、私の中が混乱してしまったのだろう。
混乱したまま、それは潜在意識に封印された……。
第2話につづく……