インナーチャイルドの声を聴こう⑤

〈第4話〉

プカプカプカプカ
溶けていく
プカプカプカプカ
溶けていく……

このまま、手足も頭も胴体も全てが溶けてしまう前に、泳ぎださなければ。
誰か、私に泳ぎ方を教えてください。

その時だった、
私のあの101匹わんちゃんの黄色い浮き輪が空から降ってきた。
私はそれにつかまって、泳ぎだした。

私は泳ぎながらつぶやいていた。
K子ちゃん、あなたに教わったことは私には役に立ちませんでした。
私の浮き輪はキラキラしていなかったけど、ちゃんと私を救ってくれました。
女の子は、女の子らしく生きるのが良いのだろうか。
私は、あの時からずっと考えてきたのです。
結婚して、子を産んで、育てて、ご主人さまに可愛がられて生きていく。
K子ちゃんが教えてくれた世界を、私はやり抜くことができなかった……

ここまできて、気づいてしまいました。
このまま溶けてしまいたくない。
私はこのままで終わりたくない。
私はまだ死にたくない。

あ、
何だか私の形が変わっていました。
溶ける部分はもう溶け切ったみたいです、なぜかある時から止まりました。

私の浮かんでいるこの海は、死海でした。
塩抜きされた体がそこにありました。
もう、浮き輪もいらないくらいです。

私はほとんど骨だけになりました。

少しだけ残った身は、
いい塩梅になりました。
ここから旅立つ時が来ました。

ここまで来て、はたと気がついた。
私は、K子ちゃんに噛み付いた記憶がない。
父親に怒られた話は何度か聞いてきたので、自分が噛み付いて怒られたと思っていたが。
はっきりと覚えているわけではない。

………………

ま、いいや。

過去の私は別人なのだ。
眠い
疲れた
もう、過去の私に振り回されるのは嫌になった。
私は、これから生まれ変わってなりたい私になるように生きる。

なりたい私、
穏やかな私になりたい
きれいな私になりたい
優しい私になりたい
強い私になりたい
楽しい私になりたい
………………さようなら、私

第5話につづく……

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